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世界史の広場

映画『サルバドールの朝』からみる独裁政権下のスペイン

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映画『サルバドールの朝』からみる独裁政権下のスペイン



『サルバドールの朝』(2006、スペイン)

原  題:Salvador
監  督:マヌエル・ウエルガ
上映時間:134分
おすすめ:★☆☆

◆舞台はフランコによる独裁政権下にあった、1970年代初頭のスペイン。

25歳の青年サルバドール・プッチ・アンティックは、警察官殺害の罪で処刑されようとしていました。
彼は、独裁政権を倒し、労働者による社会主義国家建設のための運動を続けており、仲間と共に活動資金のために銀行強盗を繰り返していました。
ある日、彼は密会場所に張り込んでいた警察官に逮捕される際、持っていた拳銃で警察官を撃ち殺してしまうのです。

実は、死んだ警官には警察官の誤射による銃創もありましたが、警察はそれをもみ消しました。
また、フランコを継いで首相となったブランコの暗殺の報復的な意味もあり、サルバドールは処刑されます。

映画は、実在の人物であるサルバドールの活動と挫折、処刑までを描いています。

◆1970年代初頭というと、日本では高度経済成長時代の終わり、学生運動がピークを過ぎた頃です。
73年に和平協定が調印されたベトナムからはアメリカ軍が撤退し、戦争に一応の区切りがつきます。
同年にはチリで、選挙により社会主義政権を成立させたアジェンデに対する、ピノチェトのクーデタが起きました。
このクーデタの背後には、南米にソ連に近い社会主義政権ができるのを望まないアメリカの支援がありました。

この時代に、ヨーロッパに独裁政権があったというのは少し意外なことにも思えます。
スペインの独裁に至る道をみていきましょう。

1936年から39年までのスペイン内戦の結果、反乱を起こしたフランコ将軍が勝利し、国家主席としてスペインを支配し始めます。
フランコはファシズム勢力として、内戦中はドイツやイタリアの支援を受けました。
ピカソの有名な絵画『ゲルニカ』は、内戦におけるドイツ・イタリア軍による都市への無差別爆撃を批判したものです。

▼フランシスコ・フランコ将軍
  

日本、ドイツ、イタリアなどのファシズム諸国が、第二次世界大戦での敗北により、次々と民主化していく中で、戦争中に中立を守ったスペインでは、独裁政権が戦後も存続しました。

スペインで民主化が達成されるのは、1975年にフランコが死去し、王政が復活した後です。
78年には国民投票により新憲法が公布されます。
サルバドールが処刑された、4年後のことでした。

◆映画の中で印象的だった部分は3点です。

1点目は、サルバドールの無罪判決、恩赦を求める弁護士が政党、労働組合に並んで教会や法王にもはたらきかけを行っている点です。
スペインはカトリックが主な宗教ですが、その宗教の持つ力が大きいのは特徴的です。
教会勢力は新大陸での統治や、フランコ将軍の反乱を助けたという側面もありました。

2点目は、社会主義の理想の強さです。
この時代には、まだソ連が存在しており、社会主義という思想は独裁に苦しむ人々には一種の理想となりました。
多くの社会主義国で、独裁が行われていたことは、皮肉なことです。

3点目は、警察官殺しの罪の重さです。
「強盗よりも、警察官殺しが問題」というような台詞があります。
警察は、独裁政権下にあっては反抗勢力を潰すための強力な権力の道具であり、これに歯向かうことは体制への反逆を意味したのです。

▼サルバドールの処刑に使われた鉄環絞首刑の用具。
鉄の環に首を通し、万力を締めあげる絞首刑の一種。
スペインの処刑方法としては一般的だった。


◆個人的に、映画の構成については好みではありませんでしたが、スペインの現代史を考える上で参考になる映画だと思います。
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