
『アミスタッド』(1997、アメリカ)
原 題:Amistad
監 督:スティーヴン・スピルバーグ
上映時間:154分
おすすめ:★☆☆
◆舞台は19世紀半ばのアメリカ合衆国。
南北戦争の起こる少し前。
1839年、アフリカから連れてこられた数十人の黒人奴隷たちが、船上で反乱を起こしました。
反乱は成功。彼らはスペイン人の船長を生かしておく代わりに、故郷への案内をさせようとします。
しかし、船長は黒人たちを騙し、正反対の大陸であるアメリカへ向けて舵をきります。
ロングアイランド沖合でアメリカ海軍に捕まった彼らを待っていたのは、彼らの所有権と反乱の罪を問う裁判でした。
スペイン人は、黒人たちのことをキューバから連れてきた「奴隷の子」であると主張。
「財産」である彼らの引き渡しを要求します。
一方、奴隷解放の活動家らは黒人たちがアフリカから密輸されたことを突き止めようとします。
アメリカでは、ジェファソン大統領の1808年に奴隷貿易が禁止されていました。
そのため、もし黒人たちがアフリカから来た事を証明できれば、彼らを自由にすることができたのです。
◆国内では黒人奴隷の是非をめぐって対立が深まりつつあり、この裁判は大きく取り上げられるととなります。
次の選挙を控えた大統領ヴァン・ピューレンが、奴隷制支持の南部の支援を取り付けるため、最高裁判事に圧力をかける場面もありました。
しかし、判事は意外にも奴隷の自由を認める判決を下し、黒人たちは故郷へ送り返されることとなりました。
アメリカの厳格な三権分立も、歴史の中で徐々につくられたんですね。
アメリカ合衆国第二代大統領ジョン・アダムズの息子で、前大統領のジョン・クィンシー・アダムズも裁判に参加。
奴隷制反対の立場から黒人の弁護をするなど、大物も登場します。
▼アフリカでの奴隷の移送(Wikipedia)
◆タイトルのアミスタッドは、彼らが乗せられた船「アミスタッド号(スペイン語で友情)」に由来しています。
奴隷を運んでいる船としては皮肉な名前です。
物語は、奴隷たちを解放しようとする人々の努力と、そんな彼らに次第に心を開いていく黒人たちを中心に展開します。
先ほど書いたように、1808年にアメリカでの奴隷貿易は禁止されます。
ただし、奴隷制そのものは合法とされ、1863年のリンカーン大統領の奴隷解放宣言(1865年の憲法修正第13条により、奴隷制廃止が明文化)まで続きます。
18-19世紀にかけて、イギリスでは産業革命の結果、綿織物の生産の原料である綿花の需要が増加。
イギリス向けの綿花栽培のために、アメリカ南部のプランテーションでは大量の労働力=奴隷を求めていました。
そのため、実際には南部の需要を当て込んで、奴隷の密輸が横行していました。
◆密輸というリスクの高い貿易であったため、船主はできるだけ多くの奴隷を一回で運ぼうとします。
そのため、以前の奴隷船の状況よりも、さらに環境は悪化したといわれています。
裸にされ、狭い空間にぎゅうぎゅう詰めにされた奴隷たちは、身体を自由に動かすこともできず、排泄物も垂れ流しの状況でした。
▼奴隷船、隙間なく奴隷が積み込まれている(Wikipedia)
また、海軍の監視船に見つかったときに密輸の証拠を隠すため、黒人を処分することも平気で行われていました。
映画の中でも、おもりがついた鎖に数珠つなぎにされ、泣き叫ぶ黒人たちを海へ突き落す残酷なシーンがあります。
改めて、奴隷貿易という世界史の暗部を突き付けられる映画です。
アフリカから奴隷として海を渡った黒人の人数は、1000万~2000万人とも言われていますが、正確な数字はわかりません。
ちなみに、黒人奴隷というと西インド諸島やアメリカ南部が代表的ですが、歴史上最も多く、最も遅く(1888年)まで奴隷を使ったていたのはブラジルだそうです。